悟空の大冒険

 

  悟空の大冒険

この「悟空の大冒険」めんこコーナーは、昭和30年代ではありませんが、「西遊記」の絡みで、

どのようなものであったか興味があり収集し掲載しました。(経緯は「西遊記」をご覧下さい)


「悟空の大冒険」は
、手塚治虫の原作によりテレビで、1967年1月〜1967年9月まで全

39回フジテレビで放映されました。

登場するキャラクタアーを現代風にアレンジし、ストーリーも三蔵法師が天竺まで経典を取りに行

くというところ以外は、一般的に知られる西遊記とは内容が違っています。

普通の悟空は三蔵法師を敬っていますが、ここでは「おい、坊さん!」と呼んでいます。三蔵法師

も気が弱くなんとも頼りない性格です。八戒は大食いで食べ物のことしか頭になく、沙悟浄は「宝

じゃ宝じゃ」が口癖の宝探しマニア。また仙術使いの竜子(たつこ・上記掲載めんこのピンクの女

の子)と、原型の西遊記とは違うメンバーも追加されています。

しかし、放送当時「言葉が汚い」としてPTAから批判を受けたといういきさつもあり、4年間続

いた「鉄腕アトム」の後番組にもかかわらず9カ月で放映が終了してしまいました。


「悟空の大冒険」の“原作”では、悟空が三蔵法師を呼ぶ呼び方が「おっしょうさま」なのに対し

、本編では「坊さん」となっており、この内容変更に関しては、総監督の杉井ギサブローが、完成

したパイロット版を見るなり「自分の作りたかった物はこれじゃない」と手塚治虫に直訴し、手塚

から「なら好きなように作って良いから」と了解を得たためとの後日談があり、本当に手塚治虫が

作りたかった“妥協のないアニメ”だったのかは今となっては分かりませんが、「西遊記」製作の

時に手塚治虫が思った「本当に作りたかったのはこれじゃない」とダブらせ一歩引いてゆずったの

かも知れません。

杉井ギサブローにとっても、この時が、初めての監督作品であり手塚治虫はその事も考慮に入れた

対応だったのではないでしょうか。

杉井ギサブローは、その後、数々の作品を手掛け、あだち充・原作「タッチ」で日本アニメ大賞を

受賞、2010年には文化庁より映画功労賞が贈られました。 2012年の「グスコーブドリの

伝記」では第16回メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞しています。


杉井ギサブローはこの「グスコーブドリの伝記」の総監督に当たった時のインタビューで「漫画を

原作にするからには、漫画のとおりにやってほしいというような注文の入る仕事は全部断っていま

す。僕は若い頃からはっきりしていて、自分のしていることに注文を付けられるような仕事は、お

断り。もちろん、いじわるや、嫌だから言っているんじゃなくて、そもそもそれって変でしょう?

映画を作っている時に、ここのところはどうしましょう?とか、いちいち原作者にお伺いを立てる

んでしょうか。映画のなかでの表現については、映画の演出家の領分であって、原作漫画の出版者

や作者が踏み込むところではないと思うんですよね。(中略)手塚先生はね、一切そんなこと言っ

たことも無いですよ。」

杉井ギサブローにとって手塚治虫に出会ったことで、アニメーション監督としての信念を貫く原点

を養ったのではないでしょうか。

悟空の大冒険」たった9カ月、されど9カ月、杉井ギサブローはもちろん手塚治虫の一面をみる

大変興味深い作品です。

 

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