月笛日笛

 

  月笛日笛

吉川英治の少年少女小説「月笛日笛」を基に東映が映画化したもので、1955年2月1日「月笛日笛 第1

編・月下の若武者」、同年2月7日「月笛日笛 第2編・白馬空を飛ぶ」、同年2月13日「月笛日笛 完結

編・千丈ヶ原の激斗」を続けて劇場公開しました。


出演、六条左馬頭/石井一雄、六条菊太郎/伏見扇太郎、豊臣秀吉/原 健策、鬼怒川粛白/山口 勇、当麻

大蔵/青柳龍太郎、岩瀬文吾郎/大丸 巌、村上青人/大文字秀介、口取り才助/団 徳麿、鷹取りお雪/西

条鮎子、鞭師右近/高松錦之助、お千賀/宇治みさ子、半斎/水野 浩、天童義明/津村礼司、春美/千原し

のぶ、春美の少女時代/桂美枝子、小平次/有馬宏治、加藤孫六、加賀邦男、六条家番士/小金井修、奥方/

三神なつ子、宿の主人/尾上華丈、他。


六条左馬頭役の石井一雄(東宮秀樹)は、1953年1月〜1961年4月までの約8年間に50映画作品に

出演。ピークは1954年で1年間に18映画作品に出演し、「月笛日笛」は、その翌年の映画作品で、当時

27歳。この時はまだ絶頂期のようにも思えましたが、翌年は出演映画が無く、以降、出演本数は減少して行

きました。

六条菊太郎役の伏見扇太郎は、1954年に中村又一の名で松竹の映画に端役で出ていたのを東映にスカウト

され、翌年、伏見扇太郎として東映よりこの「月笛日笛」でデビュー、当時18歳。1965年までに79映

画作品に出演し一時は中村錦之助(萬屋錦之助)、大川橋蔵、東千代之介、里見浩太郎らと共に若手スターと

して将来を嘱望されましたが、1960年以降は伸び悩み、後輩である里見浩太郎の主演作品の助演や、一般

作品の端役にまでそのランクを下げ、1965年には若干28歳でしたがスクリーンから姿を消してしまいま

した。その背景には、黒澤明監督のリアリズムな時代劇映画が主流となり、伏見扇太郎のきゃしゃな体つきは

その流れにそぐわなかったとも云われています。「めんこの箱」の時代劇俳優角めんこコーナーの中で、伏見

扇太郎の写真めんこを掲載してますが、「時代劇俳優D」では当時としては珍しいカツラをつけない伏見扇太

郎が着物姿で刀をかまえている写真めんこがあります。伏見扇太郎を知らない人は、一風変わった俳優に見え

るかも知れませんね。

その後、黒澤明監督作品も時が経つにつれ変遷を辿るようになります。これまでの様式的な時代劇に飽き足ら

なさを感じていた黒澤明監督は、新しい表現に挑戦し「椿三十郎」のラストシーンでの血しぶきが噴き上がる

立ち回りのリアリズムは、東映時代劇の表現にも衝撃を与え、その影響で「武士道残酷物語」などの「残酷時

代劇」が生まれました。ですが「残酷」はこれまでの東映時代劇の人気を支えた「明朗」「痛快」の欠如につ

ながり、観客減を招くことになりました。

そして1963年、東映は「チョンマゲをつけない時代劇」として企画した鶴田浩二主演の「人生劇場 飛車

角」がヒットし、エンターテイメント路線の中心を「時代劇」から「任侠もの」へと移しました。

最盛期の1960年には104本を数えた時代劇映画の製作本数は、1964年には26本、1965年には

13本と激減しました。

「東映時代劇」の黄金時代は約10年でしたが、時代の流れには誰もが逆らえないものなのかもしれません。


「月笛日笛」あらすじ

第1編・「月下の若武者」

天正十六年。京の都で、禁門の騎士・六条左馬頭と豊臣の馬術師範・鬼怒川粛白とが、競い馬(きそいうま)を

催したが、左馬頭(さまのかみ)の乗る馬は決勝点で狂い死にし、粛白(しゅくはく)の勝となった。

一年後、左馬頭は、弟・菊太郎と励まし合い、駿馬「薫風」で再度の出場を計る。六条兄弟には、千八百年の

昔から伝えられた月笛日笛の2管の笛があった。粛白の家来、当麻らが兄弟に言いがかりをつけた時、鷹取り

お雪に救われたが、彼女は、裏切者の鎌田十兵衛に殺された天童家の腰元で、行方不明の姫・春美を探してい

た。競い馬が近づくと、粛白は半斎に「薫風」に飲ませる毒薬の調合を命ずる。前年にも、粛白は六条家の馬

番、才助を買収して左馬頭の乗馬を殺したのだった。

半斎はこれを拒絶して当麻に殺され、鞭師・右近の娘で、左馬頭を慕うお千賀はこれに気づく。粛白一味は、

彼女を監禁し、右近を殺した。競い馬の日は来た。才助は再び「薫風」に毒を飲ませる。


第2編・「白馬空を飛ぶ」

「薫風」は、決勝点間近で狂い死にし、左馬頭は落馬して重傷を負い、お千賀は当麻に捕われる。幾月か経て

、春美を訪ねる旅からお雪は空しく京へ帰って来た。傷癒えた左馬頭は、名馬を求めて信濃に辿りつく。

山中で、彼は名馬「吹雪」に乗った春美に会い、月笛と引きかえに馬を手に入れる。

粛白らは、早くも左馬頭を狙ったが、お雪は「吹雪」の鞍の紋を見て、春美を求めて信州へ行く。春美は愛馬

を手放した罪で領主上杉家に追われ、左馬頭は帰京の途中、粛白の配下に取り囲まれる。

不吉な予感を覚えた菊太郎は、才助の悪事を知ってこれを斬り、兄を助けるために馬を飛ばした。


完結編・「千丈ケ原の激闘」

粛白の配下に名馬「吹雪」を奪われた左馬頭は危く菊太郎に救われ、「吹雪」は正義の士豊臣の武将・加藤孫

六から再び兄弟に返された。

上杉の軍に追われた春美は、下僕・小平太と辛うじて京へ逃れ、お雪と行き違いになる。小平次は粛白を見て

、彼こそ主の仇、鎌田十兵衛である事を見抜く。小平次と旧知の加藤孫六は密かに力を借す。春美は仇を討と

うと粛白の邸に忍込み、落し穴に落ちたがその土牢にはお千賀が捕われていた。

粛白は、秘かに京を逃げようとするが、孫六と左馬頭に追いつめられ、競い馬で勝負を決する事になった。

菊太郎は、帰京したお雪と力を合せて春美とお千賀を救い出した。

競い馬の当日、腕に負傷した左馬頭は月笛日笛を添木として縛りつけ出場する。もはや粛白は敵でなく、左馬

頭は見事な勝利を得たが、その瞬間、月笛日笛は砕け散った。かくして六条兄弟や春美、お千賀、お雪たちの

上に幸せな日が来た。

(あらすじ、goo 映画より抜粋)


 

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