天兵童子

 

   天兵童子

「天兵童子」は1937年(昭和12年)9月〜1940年(昭和15年)4月まで雑誌「少年倶楽部」に連載

された吉川英治原作の少年向け時代小説です。その後、日活の製作により1941年5月、宗春太郎主演の

「天兵童子」第1話(幼き英雄)〜「天兵童子」第4話(甦る力)の4部作が劇場公開されました。


しかし、この年の12月、日本は真珠湾攻撃を行い日米開戦に突入、日活は戦時企業統合により業績の良か

った配給部門だけを残し、製作部門は大映(大日本映画製作株式会社)に吸収され映画製作からは一旦撤退

を強いられました。その後日活が映画製作を再開できたのは戦後の1954年(昭和29年)の時でした。


1955年には東映京都撮影所の製作により再映画化され6月21日「天兵童子」第1編(波濤の若武者)

、6月28日「天兵童子」第2編(高松城の密使)、7月5日「天兵童子」完結編(日の丸初陣)の3部作

を東映が劇場公開しました。

掲載のめんこは、この時の映画化された主役伏見扇太郎のもので、伏見扇太郎はこの年がデビューの年でも

ありましたが9作品に出演しています。


出演:天兵童子/伏見扇太郎、小百合/千原しのぶ、千尋/星美智子、銅八/市川小太夫、南木菩提次/原

健策、石川車之助/堀雄二、馬蝿のぶん助/中野雅晴、河童の弥太郎/津村礼司、片目の目加市/楠本健二

、茨木の石丸/舟津進、とんがりちょっ平/谷俊夫、足助孫六/大文字秀介、宇佐大八/大丸巌、羽柴筑前

守/宇佐美淳也、清水長左衛門宗治/岡譲司、黒田官兵衛/高松錦之助、加藤虎之助/原京市、福島市松/

島田秀男、牢番与吾六/水野浩、腰元/赤木春恵、他。


<ストーリー>

◇第1編 「波涛の若武者」

青江灘の漁師・銅八と娘の千尋は、ある日、浜辺に打上げられていた天兵童子という少年を救った。元気に

なった彼は、役人・宇佐大八に見つかり足軽相手に暴れ、不思議な武士・南木菩提次に助けられた。

天兵は、彼の弟子にしてくれと頼んだが、菩提次は麻の実を与え、これを蒔いて百二十日の間、その上を飛

べと言って去った。一心に飛びつづけて百二十日、天兵は今や二間近くも伸びた麻を軽く飛びこすようにな

っていた。再び役人大八に追われて逃げる途中、千尋と再会したが、彼女は備州高松城へ行けと言って又も

別れ別れになる。都へ出た天兵は途中、小百合と知りあった。彼女は誰か人を探して歩いているらしかった

。高松城へ向かうく途中、天兵は盗賊の石川車之助に一味に加わる事を誘われたが奮然としてこれを拒否し

、彼の部下に取りかこまれた。


◇第2編 「高松城の密使」

天兵を引き入れる事かなわずと見た車之助は、突如何かを投げつけると黒煙が立ちこめ天兵は気を失った。

そして天兵は車之助に五条の橋にさらされ、役人の手に捕われ牢内で責められた。羽柴秀吉の腹心で、敵状

をさぐっていた南木菩提次は、秀吉の軍勢と共に高松城を落としに向う。高松城内では千尋が働いていた。

実は千尋の父の銅八は、高松城主の清水宗治の兄だったのだ。

そのころ牢内の天兵は、牢番・与吾六に車之助一味になっている伜のぶん助の更生を頼まれ、与吾六は身を

以って彼を逃がしてくれた。高松城へ向う天兵は、ぶん助にめぐりあって与吾六の最後の言葉を伝えると彼

は涙ながらに更生を誓った。二人は秀吉の軍勢に追われ、淀の川中にある荷船に助けられる。それは高松城

へ食糧や武器を送る銅八の船で、小百合も男に扮して乗りこんでいた。舟は、城近くの川岸に着き、山道を

たどり城へ向う途中、車之助に発見されその注進で秀吉勢に追われる。乱闘のうち、小百合の探す兄が車之

助であると知った天兵は誤って谷底へ転落した。車之助は、天兵の名をかたって城内に入って城に火を放つ

役を買って出た。


◇完結編 「日の丸初陣」

天兵は、幸い菩提次に救われて高松城へかけつけたが、車之助は銅八を射殺して総攻撃の狼火を上げていた

。だが落城は免れ千尋は無事だった。しかし、城は秀吉の水攻めにあい、天兵は小早川、吉川の援軍を求め

るため濁流を泳ぎ渡ったが菩提次に捕えられる。

その時、本能寺で信長が明智光秀に殺され、菩提次は天兵をつれて軍使として高松城内に行き、主君毛利家

安泰のため城主宗治に切腹を命じた。千尋も宗治に殉じようと身を投げたが天兵に救われる。車之助は千尋

を連れ去ろうとし、ぶん助はそれをさまたげようとして車之助に殺される。

天兵が危機に陥った時、小百合は身をもってかばい車之助に斬られて重傷を負ったが、その瞬間、天兵はつ

いに車之助を斬り倒した。千尋は、小百合を助けながら天兵が立派な人間になるまで待つと誓う。天兵は、

菩提次との約束通り、秀吉から貰った日の丸の旗をなびかせつつ、秀吉軍に参加するため急ぎ去った。

(ストーリーgoo映画より)


テレビ放送では、関西テレビと宝塚映画制作により桜木健一(当時16才)主演の「天兵童子」を1964年

9月12日〜1965年5月1日まで放映しました。

このテレビドラマには土田早苗(15才)、火野正平(15才)、伏見扇太郎、松山容子らが出演しています。

この時の桜木健一は、本名の“宮土尚治”で出演しており、桜木健一の芸名を名乗るのは、5年後のTBS

系列テレビドラマ「柔道一直線」に主演することになった時からです。


「柔道一直線」は、前番組の「妖術武芸帳」が低視聴率により1クールで打ち切りとなり、その穴埋め番組

として、急遽13話完結の予定でスタートしましたが、平均視聴率が23%と予想外の大ヒットで、制作が

延長され92話と大幅に変更になりました。この間の桜木健一と相手役の吉沢京子のブロマイドは、ともに

売上げ1位のまま3〜4年間続いたそうです。また、本作品により、柔道ブームが起こり柔道入門者が急増

し、講道館より感謝状が贈られたそうです。

この時に作られた「柔道一直線」の角めんこを次に掲載しましたのでご覧下さい。


話はそれましたが、漫画としての「天兵童子」は1955年「小学五年生」5月号・6月号付録と「小学六

年生」3月号付録の三セットで完結。原作は、同じ吉川英治、漫画家は三町半左。その他にも矢野ひろしの

連載まんがなどもありました。

柔道一直線

 

 

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