笛吹童子

 

  新諸国物語 笛吹童子

『新諸国物語』は北村寿夫原作の小説で「白鳥の騎士」「笛吹童子」「紅孔雀」「オテナの塔」「七つの誓い」

「天の鶯」「黄金孔雀城」の7作品となっており、第1作の「白鳥の騎士」がNHKのラジオ放送により、19

52年1月から月曜〜金曜の午後6時30分〜45分に放送が開始されると、当時の子供達の心をとらえ絶大な

人気を博し第5作「七つの誓い」1956年12月31日の終了時まで、毎年切れめなくラジオで連続放送され

ました。

その後、2年間のブランクはありましたが、1959年より第6作の「天の鶯」、翌年の第7作「黄金孔雀城」

がNHKラジオドラマとして再開し連続放送されましたが、この時には既にラジオからテレビに放送媒体は移っ

ており、この2作品を最後にラジオ放送は終了となりました。

しかし、この間の『新諸国物語』の人気は高く「天の鶯」だけは映画にはなりませんでしたが、その他は全て映

画化され、またテレビドラマや人形劇など幅広く作られ子供達に夢と希望を与えました。


「笛吹童子」は、北村寿夫原作『新諸国物語』の第1作「白鳥の騎士」後の第2作目で、NHKラジオ放送では

1953年1月5日から同年12月31日まで放送されました。夕方6時30分になると原作者北村寿夫が作詞

した主題歌のメロディ「ヒャラーリヒャラリコ、ヒャリーコヒャラレロ、誰が吹くのか、ふしぎな笛だ」が流れ

ると当時の子供達はラジオの前に駆け寄り座り込んで15分間の放送に聴き入りました。

そして、この放送が爆発的な人気を呼び、東映が映画化製作した「新諸国物語 笛吹童子」では、中村錦之助と

東千代之介を主役に1954年4月27日 第1部「どくろの旗」、1954年5月3日 第2部「妖術の闘争」

、1954年5月10日 第3部「満月城の凱歌」を立て続けに劇場公開し大反響を呼びました。


出演 : 萩丸/東千代之介、菊丸/中村錦之助、赤柿玄蕃/月形龍之介、霧の小次郎/大友柳太朗、桔梗/田代

百合子、胡蝶尼/高千穂ひづる、丹羽修理亮/河部五郎、上月右門/清川荘司、上月左源太/島田照夫、浅茅/

松浦築枝、劉風来/水野 浩、斑鳩隼人/楠本健二、志野/五月蘭子、堂三/吉田義夫、堤婆/千石規子、雪山

/高松錦之助、杢介/かつら五郎、藤江/六条奈美子、白蓮尼/八汐路恵子


中村錦之助(萬屋錦之助)は、三代目中村時蔵の四男として生まれ、四歳で初舞台を踏み、歌舞伎役者として修行

を積んでいましたが、1953年に、新芸プロの美空ひばりから映画界への誘いを受け、歌舞伎界から離れ映画

界入りを決意。翌年の1954年2月新芸プロ製作の「ひよどり草紙」で美空ひばりと共演し映画界デビュー、

同年3月には新東宝製作「花吹雪御存じ七人男」に出演しましたが、ともに大して話題にはなりませんでした。

その後、東映と契約し「笛吹童子」「紅孔雀」に出演すると子供達のラジオドラマ「笛吹童子」人気にも押され

映画が大ヒットし人気が爆発大好評を博し、以降、中村錦之助の主演する作品のほぼ全てが話題作となり今でも

その存在は伝説として語り継がれています。


この「笛吹童子」は中村錦之助3作目で21才のときの映画出演ですが、ラジオドラマの「笛吹童子」を中村錦

之助は全く知らなかったようで、萩丸役か菊丸役の出演依頼に、笛を吹く方が菊丸と聞くと即座に菊丸役を選ん

だそうです。しかし菊丸の出演場面は、それ程多くなくあまり目立った太刀回りもなかったようです。


主役は、萩丸役の東千代之介で当時27歳。歌舞伎出身者が多い時代劇スターの中で、日本舞踊界から東映に入

社、1954年3月東映製作の「雪之丞変化」3部作で映画界デビューし「笛吹童子」は2作品目。この映画を

切っ掛けに東千代之介は東映時代劇黄金時代を支えるスターの座を駆け上ることになります。


<ストーリー>

◇第1部 応仁の乱の後のこと。丹波国満月城々主修理亮の子二人は明国に留学していて、兄の萩丸は武芸を、

弟の菊丸は面作りを学ぶ傍ら笛吹童子と呼ばれる程の笛の名人だったが、或る日白鳥の面がどくろの面と闘い、

不吉に二つに割れたので、二人は早速日本へ帰る事にした。果して玄海灘の孤島で落ちぶれた家老右門に会い、

城は野武士の首領玄蕃にのっとられ、父は自害した事を知った。兄弟は堅く復讐を誓い合ったが、戦いを嫌う

菊丸は、どくろの面に打ち克つ白鳥の面を造り上げようと、萩丸と別れて行った。

そこで萩丸は右門と満月城へ忍び込んだが、玄蕃の罠に落ち、どくろの面をかぶせられてしまった。一方、妻

浅茅と娘桔梗の住む山小屋に逃げ延びた右門は忽ち追手に囲まれたが、情を知る敵の大将隼人は故意に右門を

見逃してやった。数日後、桔梗は旅に行き悩む隼人の妹志野を救い、隼人が右門を逃した件で城に幽閉されて

いる事を聞き、彼を助けようとして却って捕えられ、隼人と共に張り付けの刑を云い渡された。

愈々仕置の日、右門と左源太も城に乗り込んだが、その乱闘の最中に突然現れた巨大な竜は隼人と桔梗を抱い

て飛び去って行ってしまった。


◇第2部 その竜は大沢山に住む妖術師霧の小次郎の化身で、彼は妹の胡蝶尼を探す為に多くの娘をさらって

いたのだった。或る日小次郎は桔梗に、妖術の邪魔をする菊丸の笛を盗めと命じた。だが桔梗は菊丸を逃し、

小次郎の恨みをかって白骨の谷へ突き落された。そこヘ一羽の鷲が飛来し、桔梗を刀鍛冶雪山の小屋へ運んだ。

然し又しても桔梗は黒髪山に住む女妖術師提婆にさらわれた。そこには隼人も幽閉されていた。隼人に想いを

寄せる提婆の養女胡蝶尼は、或る日隼人と桔梗を逃した。其処へ忽然と現れた小次郎は胡蝶尼を大江山へ連れ

去り、自分こそお前の兄だと名乗りをあげた。しかし以前より彼の悪行を憎んでいた胡蝶尼はその言葉を信ぜ

ず、大江山から逃げ出そうとして、小次郎に千仭の谷底へ落された。


◇第3部 黒髪山から逃れ去った隼人と桔梗は、途中で、玄蕃一味に追われるどくろの面の萩丸を助けた。

だがその萩丸を妖怪と信じて追って来た右門は、彼を千仭の谷底へ落してしまった。翌朝その谷底では胡蝶尼

と萩丸が失神から蘇った。萩丸の顔からはどくろの面がとれていた。萩丸の為に猿酒を探しに行った胡蝶尼は

玄蕃に発見され、危い所を嘗ての乳母藤江とその息子杢介に助けられた。一方、萩丸は白蓮尼に救われ、彼女

こそ玄蕃に攻め滅ぼされた石見判官の娘である事を知った。白蓮尼は右門の子左源太と謀ってい玄蕃をを討つ

為の白鳥隊を結成していた。萩丸は其処で菊丸とも会い、又、隼人と桔梗も到来した。或る日胡蝶尼は、都よ

り迎えに来たという玄蕃一味に満月城へ連れ去られようとした所を萩丸らに助けられ、自分が将軍の娘である

事を知った。やがて菊丸の白鳥の面も出来上り、玄蕃討伐の機は正に熟し、白鳥隊は一路丹波へ。だがその途

中、胡蝶尼をさらった小次郎の術は菊丸の笛に敗れ、黒髪山へ墜ちた小次郎は胡蝶尼をかばって提婆の手裏剣

に倒れた。さて、満月城へ乗り込んだ白鳥隊の鉄砲の前には玄蕃一味もことごとく敗れた。右門も奮戦した。

漸く城の頂上には白鳥の旗が揚げられたのである。

(ストーリーgoo映画より)

 

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